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【教育ブログ】自分で考えて行動する力!自律性って何だろう?

確かに聞いたことある。自律性ってどういう意味なの?


「自律性とは、自分で考え、自分で決断し、自分で行動する力のことです。」


なるほど。


「自律性のある子どもは、自分で問題を解決したり、目標を立てて行動することができます。」


それって自立と似ているけど、違いは何だろう?


「確かに似ていますが、自立とは違います。自立は、独立して生きることで、たとえば、親元を離れて一人暮らしを始めることや、仕事を探して働くことが挙げられます。」


そうなんだ!




今回のテーマは「自律」についてです。

現代の社会は、変化のスピードがますます激しくなっており、自分で考え行動できる「自律性を備えた人材」がますます必要とされています。

しかし、近年の不登校率の増加や新入社員の退職率の上昇が示すように、子どもの教育システムの課題が浮き彫りになっています。

まず、自律性について解説し、その後、現代の日本社会の状況と学校教育の関係、自律性を育む学習や環境、について掘り下げていきます。




自律性のある子ども


「自律性のある子ども」とは、自分で考え、自分で決断し、自分で行動できる子ども、のことを言います。

例えば、学校で宿題を出された時、自分で計画を立てて、宿題に取り組めるこどもは自律的です。何か問題が起きたときに、自分で考えて解決策を見つけることができる人、あるいは、友達の誘いを断ることができる子どもも自律性があると言えます。


自律性がある子どもは、自分で決断することができるため、自信や自尊心が高く、他者と比べることによるストレスや、他人の意見に流されてしまうことも少ないです。

しかし、完璧に自分1人で全てを決めることはしません。周りの人の意見やアドバイスを聞き入れ、自分で判断することができる柔軟性も持ち備えている、そういう人が「自律性を備えた人材」といえます。




自律は能力、自立は状態


自律と自立は、似ているようで異なる言葉です。

繰り返しますが、自律とは、自分で考えて行動し、自分で問題を解決することができる能力のことを指します。一方自立は、自分で生活することができる状態になることを指します。例えば、自分で自炊をし、自分で洗濯をして、家庭内での生活を自分で管理できるようになることが自立した状態と言えます。

つまり、自律は能力であり、自立は状態といえます。




「急速な社会変化と若者の当事者意識」


最近「ChatGPT」の話題で盛り上がっていますが、日々テクノロジーは進歩し続けています。それがコロナ禍で加速し、新しいライフスタイルの広まりや、今までになかった仕事や職種が生まれ、日本社会の急速な変化をみなさんも実感されていると思います。


例えば、オンライン授業やテレワークによって、場所や時間に縛られない柔軟な働き方が広まりましたし、外出自粛によって買い物はオンラインショッピング、映画はネットフリックス、外食は配達サービスといった需要が急増しました。オンライン生活が増えたことで、目にする情報は1人1人異なってきています。


そうして社会が多様になると、全員に当てはまる一つの正解も少なくなってきます。そんなとき、自分が何をすべきか、どう生きていくか、何を優先すべきかということに向き合い、自分で判断できる力が必要になってくると言われています。



18歳意識調査から見える当事者意識の低さ


しかし、そのように「自分で考え決断する力」、つまり自律性が日本の子どもたちに不足しているようです。


日本財団による「18歳意識調査」のうち、国や社会に対する意識調査のデータがありますが、日本の若者で「自分のしていることには、目的や意味がある」と答えた人は63.5%で、6ヵ国中最も低い水準でした。他の設問からも、当事者意識の低さがうかがえる結果になっています。当事者意識とは、自分事として積極的に取り組む姿勢のことです。


日本人日本財団「18歳意識調査」の「国や社会に対する意識調査のデータ」



この調査結果から「いまの若者はけしからん!」と子どもたちに責任転嫁をすることは正しくありません。それこそ当事者意識が欠如した発想であり、「子どもたちの意識は大人の鏡である」ということを考える必要があると思います。


受け身の発想を捨て、自ら考えて行動する「自律性」を持った子どもを増やすことは、いまの日本が国を挙げてでも取り組まなければならない課題だと思います。



マークシート型受験と暗記・詰込み型学習



では、なぜ日本の子どもたちは当事者意識が低いのか。その原因のひとつとして、学校の教育スタイルが挙げられます。


日本では、マークシート型の受験を意識した、暗記・詰込み型の教育がまだまだ主流です。教師が一方的に情報を伝え、それを暗記することが目的の受け身の学習。大量の情報を短期間に詰め込むことが求められ、自ら考えることや自己表現することは求められないので、自律性を育むことができません


また、マークシート型の受験は、正解が限られた選択肢の中から選ぶことが求められます。このような受験スタイルでは、自分の意見を自由に述べることが求められないため、自ら考えることや主体的に学ぶことを妨げる可能性があるといわれています。


また、正解のある問題を解き続けることで、人生や社会においても正解を求めてしまう、と問題視する考えもあります。現代の社会は常に変化しており、このような考え方に固執することで、自己判断力を失い、一歩踏み出せない状態になる恐れがあると言われています。テクノロジーの進歩によって多様性がますます増している中で、誰にでも当てはまる正解は存在せず、その場その時の状況に応じた自己判断力が求められているのではないでしょうか。



しかし、近年このような教育スタイルに疑問を持つ声が大きくなっており、アクティブ・ラーニングやディスカッション型の授業を導入し、自律性を育む取り組みを進めている学校も増えてきました。




「対話型の学びがもたらす自律性の育成」


近年の激しい社会変化にともない、教育スタイルの変化を求める声も大きくなっています。対話中心で主体的に取り組む授業が必要だという考え方が広がり、小学校は2020年度、中学校は2021年度、高等学校は2022年度から新しい学習指導要領がはじまっています。新しい学校教育で重視すべきことについて、文科省ホームページではこのように紹介されています。


子供たちが「何を知っているか」だけではなく、「知っていることを使ってどのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」ということ  (参考)新しい学習指導要領が目指す姿 | 文部科学省


つまり、「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」を重視した学習にチェンジしていっています。そのために、学校授業では「アクティブ・ラーニング」を取り入れる動きが進んでいます。



参加型授業で自律性を育む!アクティブラーニングとは


アクティブラーニングとは、参加型の授業形式のことです。教師が単に知識を伝えるだけでなく、子どもたちが主体的に学び、対話を通じてアイデアを共有する授業です。自己学習能力を向上させ、自律性を育む効果が期待されています。


アクティブラーニングの具体例としては、グループディスカッションやプレゼンテーションなどが挙げられます。グループディスカッションでは、問いに対する自分の意見を考え、他者と意見交換します。そうすることで、自分の意見を自由に表現することができますし、他者の意見から自分の考えを整理することもできます。


また、プレゼンテーションでは、自分のアイデアを発表することで、フィードバックを受け取ることができます。これを踏まえて、自分のアイデアブラッシュアップし、良い成果物を生み出すことができるようになります。


このような時間を過ごせれば、子どもたちは、自分で考えたり、自分で判断する力を身につけることができます。そして社会に出た後、自律的な行動を求められた場合でも、自分の行動を自分で決断していけると思います。



自律性不足がもたらす社会のギャップ


ただ、今の日本にはそういった「自分で決断する能力」がある人材が不足しています。


いまだ受動的な教育スタイルが主流です。受け身の教育で育った子どもたちは、学校を卒業して社会人になってから急に自律的な行動を求められるようになるので、そのギャップに苦しみ自分が過ごす環境に悩んでいるのです。それが近年の新入社員の離職率や転職率の高さにつながっているといえます。(厚生労働省が2020年に報告したデータによると、2019年における入社3年以内の離職者は約3割です。)


自分で考えて行動することができず、上司や先輩の指示に従うだけになってしまうと、自分にとって大切なこと、本当にやりたいことを見失ってしまいます。


また、「思っていた会社じゃなかった」「働き方が合わない」というように、社会や仕事への理解の低さにも原因があると思います。思っていた会社や業界と実際の現場のギャップに失望する、自分に合わない働き方に苦しむ、これらの問題は、教育現場でのキャリア教育不足や、情報格差が拡大する現代社会に起因するものと考えられています。



キャリア×アクティブラーニング「Yononaka」


こういった観点から、自律性を育む教育と共に「キャリア教育」も求められており、キープオンでは「Yononaka」というワークショップを月1回開催しています。


よのなかの身近なモノについて、アクティブラーニングの手法で参加者同士で話し合い考えながら、「自律性」を育む学習です。先月は「れきし」がテーマで、6つのワークに対して自分自身の意見を作り、参加者同士で共有するアクティブラーニングを実施しました。





次回は「AI」がテーマです。いま流行りのChatGPTのことも取り上げながら、複数の視点で考えていきたいと思っています。オンラインで参加無料ですので、気になった方はぜひご参加ください!





「自律性を育むための環境と言葉がけ」



自律性を育むための環境「心理的安全性」


自律性を育むためには「失敗しても大丈夫」と思える環境が必要です。

何か新しいことに挑戦するとき、誰でも最初は失敗しますよね。

その失敗こそが学びのチャンスなのです。


新しいことを始めるとき、最初は上手くいかないことがたくさんあります。

そんなときに「失敗しても大丈夫、どこが原因か一緒に考えよう」と言ってもらえると、悪い結果を出してしまったことに対して悩み過ぎず、次に向けて前向きに考えることができます。

それに比べて、失敗を許さない環境だと、自分自身を責め過ぎてしまったり、次に挑戦することを躊躇してしまったりすることがあります。そんな失敗を許容できる環境のことを「心理的安全性」といいます。


心理的安全性がある環境では、失敗を気にすることがないので、自由に考え行動しやすくなります。

また、積極的にトラブルを体験して、自分の足りない部分を自覚することで、それを乗り越えるためにどうするか考える習慣が自然と身につきます。

そうして自律性が育まれ、子どもはどんどん成長していくことができます。


また、心理的安全性がある環境では、自分自身に対しても優しく接することができます。

例えば、学校で発表するとき、自分の言葉が詰まってしまったり、上手く話せなかったりすることがあります。

そんなときに、自分に対して「失敗しても大丈夫。自分のペースで進めよう」と言い聞かせることができるようになれば、自分自身に対するストレスを軽減することができます。

自分自身をコントロールするスキルを身につけるためには、まずは心理的安全性のある環境を作ることが大切です。失敗を恐れず、積極的に新しいことに挑戦することで、自律性を育むことができます。



子どもが主役!自己決定を促す「3つの言葉がけ」


最後に、子どもの自律性を育むために、わたしたち大人がサポートできることについて、書いていきます。


私は日々受講生と接するなかで、時間に追われ、余裕がなく、自分で決断できない子どもたちを見ることがあり、子どもの教育に対する熱心さゆえの「過剰なサポート」が、逆に自律性を阻んでいるんじゃないかなと思っております。


元・千代田区立麹町中学校校長の工藤勇一さんも「物理的な時間を増やすことより、ゆとりを感じることができる力を育てることが大切だ」と著書で書かれています。子どもたちが自分で動き出せる、ゆとりのある環境を準備してあげることが、大切だと思っています。


工藤さんは著書「自律する子の育て方」にて、子どもに自己決定を促す「3つの言葉がけ」を紹介されています。その言葉とは以下の3つです。


1,「どうしたの?」(「なにか困ったことはあるの?」)

2,「どうしたいの?」(「これからどうしようと考えているの?」)

3,「何を支援してほしいの?」(「なにか支援できることはある?」)


工藤勇一・青砥瑞人 著「自律する子の育て方」73ページ引用




これはご家庭でもすぐに使うことができる言葉がけです。

まず「どうしたの?」で、自分が置かれている状態を言葉にしてもらいます。子どもが何をしても頭ごなしに叱らないこともポイントです。


次に「どうしたいの?」で、子どもの意志を確認します。自分の状態を解決するための方法を、自分の頭で考えていくきっかけづくりです。


最後に「何を支援してほしいの?」で、解決のサポートをします。どんなサポートが必要か、もしくはそもそも受けないかを子どもに判断してもらいます。同時に、サポートをする意志を示すことで、子どもは「味方なんだ」と認識できるので、さらに心理的安全性が確保されます。


この3つの言葉がけで常に子ども自信が自分で決定できる機会をつくることで、自己肯定感が高まり、自然と自信も湧いてきます。自己決定させることはどんなに小さなことでも構いません。とにかく、子どもでも決められるのにもかかわらず、大人が勝手に決めてしまうことが子どもの自律性を阻んでしまっていることを理解する必要があると思います。



自律性を育むスクール

キープオンでもこの3つの言葉がけと、心理的安全性が確保された環境づくりを心がけ、日々子どもたちと接しています。

失敗してもOK」そこから原因を考え、仮説を立てて再トライする。その試行錯誤のプロセスで、過去の偉人たちは、現在のテクノロジーを生んでいるのだと思います。


キープオンラボは、「自律性を育む」ことを目的に、2023年度から新たなワークショップを5つスタートしております。

受講生はもちろん、我々スタッフと一緒に保護者の皆さんもワークショップに参加をして、子どもたちに新しい刺激を与えてほしいと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。





以上「自律性を育むことの重要性」について書いていきました。

日本財団の調査から、各国に比べて日本では「自律性」を持つ人材が不足しており、教育の内容によって社会に大きなギャップが生じています。受動的な教育スタイルがまだ主流であるため、自律性が育まれていない生徒たちは、独立して大人になるときに苦労することが多いとされています。

自律性を育むために近年注目されている教育方法が「アクティブラーニング」であり、当スクールでも「Yononaka」というワークショップで自分で考え、自分で決定する力を育成する機会を提供しております。このワークショップは、誰でも無料で参加できます。

また、自律性を育むための環境として「心理的安全性を確保することの重要性」についても説明しました。失敗してもいいと感じることが、自分自身で考え、行動する気持ちにつながります。

子どもたちが自分自身で決定することを促す3つのフレーズも紹介いたしました。「どうしたの?」「どうしたいの?」「何を支援してほしいの?」の3つのフレーズをご家庭でも使われることで、子どもの自己肯定感と自信を高め、自律性を育むきっかけになるでしょう。


次回以降も、教育に関する発信をしていく予定です。ひとつのテーマを深堀りして書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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